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2022年4月21日

Good On People vol.6 福留 隆志(Good On/生産管理)

  • Special Feature / 特集
  • Good On People / グッドオンピープル

ブランド誕生から25年。
長い歴史の中でGood Onと深く関わるキーマンたちはどのように人生を“経年変化”させてきたのか。
その人物とGood Onとの繋がりを読み解く連載企画Good On People。

第6回はブランドを縁の下から支える、生産管理担当の福留さんにインタビュー。
Good Onならではの、妥協を許さない複雑な生産工程を長年にわたりコントロールしてきた彼の話には、他の追随を許さないレベルにまで確立された<グッドオンクオリティ>の知られざる秘密が詰まっていました。

#06_福留隆志
Good On生産管理
IG/@tk_peacefullife

Q.はじめに、Good Onで働くことになったきっかけを教えてください。

2003年、24歳の時に中途採用で入社しました。
 

高校卒業後に上京して、もともとモノを作ることが好きだったので服飾の専門学校に通い、洋服のパターンや基礎的な部分を学んでいましたが、現場で勉強したいという思いから中退して、アメカジをベースとした古着屋で働きはじめました。
その数年後にはアメリカンテイストの雑貨を扱うお店に転職し、販売職と植物の配達なども経験しました。
 
それから数年経過したタイミングでまたアパレル業界に戻りたいなと思っていた矢先、当時弊社がやっていた直営店にお客さんとして通っていた経緯もあって、たまたまスタッフ募集を見つけて応募しました。

Q.今の仕事に就く前からアメリカ物が好きだったんですね。何かきっかけがあったんですか?

中学生くらいの時に観た映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」で、1950年代にタイムスリップするシーンに衝撃を受けたんです。その50年代のアメリカのビジュアルが衝撃的で。
いわゆる”50’s(フィフティーズ)”ってやつですね。
家具から洋服から音楽まで、その世界観が幼心に強烈に響いたんです。
そこからアメリカ古着を扱うお店に通うようになり、どんどん古いものにのめり込んでいくことになりました。
当時は世の中的にも、古いもの・ビンテージ=アメリカ、という流れが自然だったんですよね。
 
他に、高校生の時に手にした雑誌「smart」の創刊号で読んだ「モッズ特集」にも強い衝撃を受けました。
かなり影響を受けて、モッズのカルチャーやファッションにもハマっていました。
 
ちなみに、この雑誌に掲載されていた広告を見て専門学校への入学を決めたんですよ(笑)。
色々な意味で影響を受けました(笑)。

Q.入社当時からずっと生産管理を担当されてきたんですか?

営業職の募集で入ったので、はじめの4~5年はインポート品の卸売りの営業として働きました。
当時の弊社はインポーターで、日本ではまだ珍しかったアメリカのブランドのカットソーや雑貨、古着などをたくさん買い付けてきて、全国のセレクトショップなどに卸していたんです。
好きだったアメリカ物を輸入して扱っている会社で働ける、というのは魅力的で、営業の仕事も面白かったですね。
 
私が入社したときはすでにGood Onブランドはスタートしていましたが、今のように豊富なラインナップは無く、まだTシャツやスウェットが数型だけといった程度でした。
 
もともと別の方が生産管理をやっていたのですが、その方が退職されるタイミングで営業職から今の業務の担当になった感じです。
その先輩が「モッズ」や「スカ」のカルチャーにかなり詳しく、ご自身でもバンドやイベントをやられていたこともあり、意気投合して公私ともにお世話になっていたので、本当に色々なことを学びましたね(笑)。
私の他に本格的な洋服の作り方などを学んでいたスタッフが居なかったこともあって、自然と私が仕事を引き継ぐ形になりました。
生産の仕事をスタートした当初は営業との兼任のような形でした。

当時は無地よりも、プリントやリメイクが売れていた時代なので、Good On自体は卸しも小売りもそういった商品のボディとしての需要が圧倒的に多かったですね。
他に、海外ブランドへの別注品や、布帛やデニムなどを使ったオリジナルブランドなども並行して展開していて、業務内容は「生産」というよりは「商品管理」に近かったかもしれません。
 
当時Good Onは、総合的にアメカジというカテゴリーを展開するためのオリジナルブランドのひとつで、会社としてはベーシックなGood Onのカットソーと組み合わせて提案する形で、他にも色々なアイテムやブランドを展開・販売していました。

Q.福留さんの視点から、そのような中でGood Onブランドが頭角を現し、現在のような展開に変わっていった理由は何だと思いますか?

以前の記事で営業の広沢も話していたかと思いますが、2010年代に入り、本格的なインターネットの普及や大手セレクトショップ、ファストファッションなどの台頭もあって、弊社の事業内容も変わっていきました。
インポート品の卸し売りやデニム・布帛を使用したオリジナルブランドなどは徐々に縮小に向かい、反対にGood Onの存在感が増していきました。
リーマンショックや震災などを経て大きくアパレル消費の流れが変わっていく中で、2011年に恵比寿、2013年に横浜と相次いでセレクト業態の直営店を閉店し、Good Onに大きく比重を転換したことも大きかったですね。
 
この頃からバイヤーさんたちのGood Onの捉え方もガラッと変化したように感じます。
それまでの「いちカットソーブランド」という認識から、ベーシック・シンプルで質の良いブランド=「Good On」というイメージが確立されていき、世間的にもそういった認知をされるようになり始めた気がします。
 
ブランドスタートから当たり前に続けてきていた、クオリティーを変えない、商品を変えない、というようなことがエンドユーザーさんたちにも10年がかりで伝わっていき、それが少しずつ<安心感>や<信頼>へと繋がっていったのではないかと感じます。
 
ありがたいことに、皆さんがGood Onの商品を長く着続けてくださっていること自体が、クオリティーの証明となっていったんですね(笑)。
 
もう一つ、当初はブランドのアイデンティティでもあった「Made in USA」を敢えて手放す決断をしたことも大きかったです。
アパレル業界、特にアメカジをはじめとするカジュアル衣料においては象徴的な「アメリカ生産」は、生産管理の目線でいうとかなり難敵なんです(苦笑)。
全工程をアメリカで進めていくと、シンプルな構造のものは量産できても凝ったものはなかなか作れなかったり、納期が遅れてしまったりと、日本の市場に合わせて柔軟にコントロールしていくことが簡単ではなく、ブランドが認知され生産数が伸びていく中でクオリティーを維持しながら供給を継続していくのが困難になってきていました。

そこで、レベルの高い日本の市場に合わせた基準をキープするために、また、お客様により良いものを提供していくための変化に対応するため、決断をしました。
Made in Japanへの移行です。
これは本当に大きな決断だったと思います。
 
Made in Japanへと移行するのは本当に苦労しましたが、結果的に、今では出来ることが格段に多くなり、品番数やバリエーションも増え、B品(※傷ものなどの不良品)も減り、より皆さんにGood Onを楽しんでもらえる機会が増えました。


『Fabric Made In USA , Assembled In Japan』
この表記も今では定着してきましたね。
こだわりを残しつつ、社会の流れにも柔軟に対応したことで、好循環が生まれたと言えます。

Q.ブランドの屋台骨ともいえる「生産管理」という仕事で、常に意識していることがあれば教えてください。

とにかくクオリティーの管理です!
素材、染め、縫製など、25年変わらないものを作り続けながら、その生産数、商品数はどんどん増えていますから、最も重要です。
これが、皆さんが想像される以上に本当に大変な作業でもあります(笑)。
 
その一つが「縮率(※生地や製品を染色・洗濯したときに縮む割合のこと)」との闘いです。
どういうことかというと、Good Onの製品の素材であるコットン、つまり綿花というのは植物なので、産地、栽培・収穫される年などの条件によって性質が違ってきます。
去年採れた綿と今年の綿とでは、当然、触り心地や質感も違えば縮率も違いますが、去年と今年とで変わらない製品に仕上げなければならない。
そのためにシーズンごとに各商品の縮率を計測し、その数値に合わせてパターン(型紙)を調整していくんです。
毎年変化する素材を”25年変わらない製品に落とし込む”ために、この作業が常に必要なんです。
 
大変ですが、Good Onを作り続ける限り永遠に続けなければならない作業であり、一番神経を使う部分です。
 
「カットソーに対してミリ単位までこだわるブランドはほとんど無いですよ」ってよく言われます(笑)。
基本的にカットソーは洗えば縮むし、着れば伸びるものですしね。
でもそれこそが安心して選んで頂くためのこだわりであり、Good OnがGood Onたる所以ですから。手は抜けません。
 
縮率だけに限らず、それぞれの商品に使われている生地の性質や特徴は異なるので、その良さを最大限に生かした製品になるよう全て細かく対応しています。
 
とにかく根気のいる作業の連続なんです、Good Onの生産は(笑)。

Q.なかなか終息が見通せないコロナ渦で、生産管理の仕事はアパレル業界でも特に直接的な影響を受けていると思いますが、どのように情勢変化に対応されていますか?

コロナウィルスの影響はもちろんですが、他にも様々な世界情勢の変化が重なっていて、私たちが長年取り扱ってきたUSAコットンの市場にも大きな影響が出始めました。

さらに、アパレル産業のSDGsやサステナブルへの取り組みも高まっており、世界的にUSAコットンへの需要が高騰してきています。名だたるブランドやメーカーも素材の確保に躍起になっていて、Good Onでも今までのように確保することが難しくなってきたのは確かです。
綿花というのは栽培される場所や、年間で採れる量がある程度決まっていますから、生産できる量や供給のペースに対して需要が激増しているような状態になってしまっていて、Good Onを生産するにあたっても素材の価格高騰や入手困難といった影響が出てきてしまっているのが現状です…。
 
また、コロナウイルスによる影響で、世界中の物流にも大きなダメージが出始めていますよね。
船便、コンテナの不足、人材不足などで、輸送にもこれまで以上に時間とコストを要するようになっています。
 
二重三重に良くないサイクルが起きてしまっている中で、素材の確保から輸送、縫製を経て、最終工程である国内での染色、仕上げまで、一連の流れが詰まらないようにコントロールするのに非常に難儀しています(苦笑)。
長く複雑な生産工程こそがGood Onのクオリティーの肝ですから、妥協という選択肢はあり得ません。

ここ数年は、なるべく余裕を持って早期に素材と生産ラインを確保するよう努めていて、早い物だと商品をリリースする1年半以上前から、事前に受注・販売数を見込んで、必要な分の素材を確保しています。
あらゆる策を講じて対処していますが、それでも今シーズンは一部の商品で納期遅延が生じてしまっていて、お待ち頂いているお客様には本当に申し訳ありません。

Q.昨今の大変な状況下でも販売数を伸ばし続けているというのは並大抵のことではないと思います。ユーザーからの期待もますます高まっているのではないですか?

震災やパンデミックといった生活環境の変化に近年のSDGsが叫ばれる時代背景も相まって、私たちのこだわりや、「長く愛用される製品で世界のお客様を幸せにする」「環境に配慮した高品質の製品を提供する」といったブランドの基本理念に注目してくださる方も増えていて、それをきっかけに知ってくださる方も多いようです。
受注、生産数も年々伸びていますが、私たちとしては当たり前に続けてきたことを評価して頂けて、少し不思議な感覚です。
 
ただ、先ほどお話ししたように、生産する量が急増している中で、今までのようなサイクルでは物作りが出来なくなってきていて、今まででは考えられなかったようなスケジュール感で動かなければお客様の元へと商品が渡らなくなっています。
直近では国内の工場関係者からも人手不足の話しが聞こえるようになってきましたし、今後も多方面からの多岐にわたる影響に対処していかなくてはならないでしょうね。
 
とにかく今はお客様の元にいかにスムーズに商品を届けることが出来るかを、毎日試行錯誤して、いち早く改善出来るよう奮闘しています。
ご迷惑をお掛けしている皆様には非常に申し訳ない気持ちで一杯ですね…。

Q.最後に、ブランドの生産マスターとして、商品を生み出す上でのこだわりを教えてください。


アメリカで生産された生地のチェックから製品としてお客様の元にお届けするまでには数々の工程を経ていて、中には本来は外部の機関に委託して行うのが一般的となっている作業も多々ありますが、弊社ではクオリティーを保つために一貫して自社で管理することにこだわっています。
 
染めや製品の風合い感を大切にしているからこそ、労力が掛かること、大変なことにも敢えてチャレンジする。その姿勢がこのブランドを25年継続してこられた秘訣だと思っています。
 
良いものを生み出すための手間と時間と労力を惜しまず注いでいること、これは絶対に他社さんには負けないと思いますし、それこそGood OnがGood Onであり続けられる理由かなと。


Good On My Body
ーお気に入りの1着ー

着用歴10年以上のスウェットパーカー

ピグメントネイビーの色味がほとんど褪せきったと言えるほど、ガンガン着倒して洗い込んでいます(笑)。
ただ、生地や縫製へのダメージはほぼ見られません!


Photo:Kanjiro Aoki
Text:Suemichi Tarodachi(elevenista)
Produced:Yosuke Niwa(Good On)
Production:KARHTU


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